スペインにおける貴社の現地パートナー
最終更新日 2026年11月2日
要点
スペインは現地パートナーを求めていません。欧州連合(EU)域外の企業が、スペイン子会社(現地法人)の唯一の出資者となり、スペイン国外に住む取締役を置くこともできます。一方で、現地での体制は求められます。具体的には、税務識別番号(Número de Identificación Fiscal:NIF)、場合によっては投資の事前許可と税務代理人(representante fiscal)、投資登録簿(Registro de Inversiones)への届出、実質的支配者(titular real)の申告、人員に必要な許可、アポスティーユまたは領事認証を受けた書類、そして行政機関との電子的なやり取りです。法律事務所・ゲストリア(gestoría:行政・税務・労務の手続きを代行するスペインの事務所)であるManagoraが、その体制を担います。遠隔で、確定見積りに基づき、貴社に代わって書類を提出し、署名します。
スペインでは現地パートナーが必要ですか?
いいえ。スペインは外国企業に対し、スペイン側の出資者と資本を分け合うことを義務づけていません。非居住者との取引は、後述する投資規制と各分野の規則を除いて自由です。また、サービス活動については、出資者・取締役・従業員がスペイン人またはスペイン居住者であることを求めることが、法律で禁じられています。貴社が子会社の唯一の出資者となることができます。
スペインが求めるのは現地での体制です。具体的には、次の表に挙げる10の義務です。その役割を当事務所が担い、スペイン国税庁(Agencia Estatal de Administración Tributaria:AEAT)、社会保障当局(Seguridad Social)、外国人関係当局(extranjería)および各登記所に対し、貴社に代わって書類を提出し、署名します。
一部の分野には、資本の出所に関する独自の規則があります。2つの例を挙げます。
- 航空輸送:EUの航空会社の運航免許を受けるには、所有の50%超と実効的な支配が、加盟国またはその国民の手にあることが必要です。ただし、EUと第三国との協定による例外があります。
- 国防:国防に直接関係する事業への外国投資には、投資元を問わず事前許可が必要です。ただし、一定の要件を満たす小規模な出資は除きます。
スペインで求められる10の義務は?
EU域外の企業にとって、特に負担の大きい義務です。すべてが貴社に該当するわけではなく、業種、進出の形態、貴社の所在国によって異なります。
| 義務 | 対象と求められる内容 | 当事務所の対応 |
|---|---|---|
| 1. 投資の事前許可 | EUおよび欧州自由貿易連合(EFTA)の域外の投資家(域内の投資家でも、域外の者が25%超を保有し、またはその支配権を持つ場合を含む)が、戦略分野に属するスペイン企業の10%以上または支配権を取得する場合。戦略分野とは、重要インフラ・重要技術、エネルギーその他の物資の供給、機微情報、メディアです。投資家が外国政府の支配下にある場合は、分野を問いません。許可を得ていない取引は無効です。 | ご署名の前に、事前検討の段階で確認します。 |
| 2. 投資登録簿への届出 | 非居住者の投資家が、設立または買収によってスペイン企業の10%以上を取得する場合、支店(sucursal)を開設し、もしくは支店に資金を拠出する場合、または50万ユーロを超える不動産を購入する場合。投資後1カ月以内に様式D-1AまたはD-2Aで届け出ます。資本金、支店への割当資金(dotación)または純資産が300万ユーロを超える場合や、その会社がグループの親会社である場合は、年次報告書(様式D-4)も提出します。 | どの様式に該当するかをお伝えします。スペインの公証人(notario)の前で公正証書(escritura)を作成する場合は、公証人事務所(notaría)が届け出ます。 |
| 3. スペインのNIFを持つ子会社または支店 | スペインに進出するすべての企業。親会社にはNIF(Nで始まる番号)が、支店には支店自身のNIF(Wで始まる番号)が必要です。また、公証人の前で署名する人には、外国人識別番号(Número de Identidad de Extranjero:NIE)またはMで始まるNIFが必要です。公証人は、これらの番号を公正証書に記載します。 | 子会社の設立または支店の登記とNIFの手続きを行い、取締役のNIEの申請書を作成します。 |
| 4. 非居住者所得税(Impuesto sobre la Renta de no Residentes:IRNR)の税務代理人 | 支店その他の恒久的施設(establecimiento permanente:PE)を有するEU域外の企業(欧州経済領域の一部の国の企業を除く)など。PEを有する場合、税務代理人は納税について連帯責任を負います。任命しなかった場合は2,000ユーロ(所在国がスペインと税務情報を交換していない場合は6,000ユーロ)の罰金が科されます。 | 案件の内容が許す場合は、当事務所が税務代理人をお引き受けします。 |
| 5. 付加価値税(IVA)の税務代理人 | EU域内に拠点を持たず、スペインでIVA(Impuesto sobre el Valor Añadido、いわゆるVAT)の納税義務者となる企業。IVAのワンストップショップ(OSS・IOSS)を利用する場合や、その国がEUと同様の相互援助の仕組みを持つ場合(スペイン国税庁によれば、現在はノルウェーのみ)は不要です。 | 案件の内容が許す場合は、当事務所がお引き受けします。 |
| 6. 実質的支配者 | すべてのスペイン企業とすべての支店。誰が支配しているか(25%超を有する者。該当者がいない場合は取締役)を把握し、常に最新の状態に保つ必要があります。会社は、商業登記所(Registro Mercantil)への年次計算書類の提出(depósito de cuentas anuales)の際に申告し、変更があった場合は10日以内に申告します。 | 実質的支配者の申告書を作成し、提出します。 |
| 7. 人員に必要な許可 | スペインで働くために来る、EU域外の国籍を持つ経営幹部・従業員。移動の自由を有する人(EU市民、スイス人、ノルウェー人)は対象外です。国際的な人材移動の制度では、大企業・戦略的グループ担当(Unidad de Grandes Empresas y Colectivos Estratégicos:UGE-CE)が許可の手続きを行い、20日以内に決定されます。期限内に決定がない場合は、許可されたものとみなされます。 | スペインの企業内転勤(traslado intraempresarial)、高度専門職(profesional altamente cualificado)またはEUブルーカード(tarjeta azul UE)の許可を、貴社に代わってMERCURIO(外国人関係の許可の電子申請システム)で申請します。 |
| 8. アポスティーユまたは領事認証と法定翻訳 | スペインで会社を設立し、支店を開設し、代理権を付与し、または購入を行うすべての企業。親会社の書類にはアポスティーユ(ハーグ条約に基づく付箋による証明)または領事認証(legalización consular)が必要で、原則としてスペイン語(カスティーリャ語)への法定翻訳(traducción jurada:スペイン外務省が認定した法定翻訳人による翻訳)も必要です。 | アポスティーユまたは領事認証と、法定翻訳の手配・調整を行います。 |
| 9. 行政機関との電子的なやり取り | 外国法人を含むすべての法人と、その代理人。行政機関とは電子的手段でやり取りしなければならず、国の行政機関に対してはスペイン語を用います。 | 貴社から代理権の付与を受けて、貴社に代わり書類を提出し、署名します。 |
| 10. データ保護に関するEU域内代理人 | EU域内に所在する人に物品やサービスを提供するため、またはその行動を監視するために、その人々の個人データを取り扱うEU域外の企業。ただし、リスクの低い一時的な取扱いは除きます。スペインでは、代理人は損害賠償も含めて、その企業と連帯して責任を負います。 | 貴社に代理人が必要かどうかは、事前検討の段階でお伝えします。 |
事業内容によっては、ほかにも義務が生じることがあります(消費者向け製品、包装、デジタルプラットフォーム、公共調達)。事前検討の段階で確認します。
子会社か、支店か?
選択の決め手になることが多い違いは、次のとおりです。
| 比較項目 | 子会社(有限会社または株式会社) | 支店 |
|---|---|---|
| 法的性質 | 独自の法人格を持つスペインの会社です。 | 本社そのものであり、スペインに拠点と常任代表者(representante permanente)を置きます。新たな法人は生まれません。 |
| 責任 | 親会社は、子会社の債務について自ら責任を負いません。 | 支店は本社の名で活動するため、本社が支店の行為について責任を負います。 |
| 資本金 | 有限会社(Sociedad de Responsabilidad Limitada:S.L.)は1ユーロから(3,000ユーロ未満の場合は特別な規則があります)、株式会社(Sociedad Anónima:S.A.)は6万ユーロからです。 | 本社が支店に割り当てる資金です。 |
| 課税 | 法人税(Impuesto sobre Sociedades)が課されます。親会社への配当は、租税条約(二重課税防止条約:convenio para evitar la doble imposición、CDI)に定める税率で源泉徴収されます(条約がない場合は19%)。 | 法人税と同じ税率で非居住者所得税が課され、本社に送金する利益にはさらに19%が課されます。ただし、相互主義のある租税条約があり、その条約に別段の定めがない場合は、この19%は課されません。 |
| 税務代理人 | スペインの居住者であるため、不要です。 | 本社がEU域外の企業である場合は、原則として必要です。 |
| 手続き | アポスティーユまたは領事認証を受け、翻訳された親会社の書類を添えた設立公正証書(escritura de constitución)の作成、商業登記所での登記、NIFの取得。 | アポスティーユまたは領事認証を受け、翻訳された本社の書類を添えた公正証書の作成、商業登記所での登記、支店自身のNIFの取得。 |
一般論として、どちらが優れているということはありません。子会社では、リスクを親会社の財産から切り離せます。支店は別会社をつくらずに済みますが、本社がリスクにさらされます。第三者の条件で決まることもあります。公共工事の契約では、入札の条件書(pliego)により、EU域外の落札者にスペインで登記された支店が求められることがあります。どちらにするかは、事前検討の中で貴社とともに決めます。
当事務所の業務の進め方は?
- 1
事前検討と確定見積り
貴社の計画を書面でお知らせいただき、該当する義務(必要な場合は投資の事前許可を含む)をお伝えします。着手前に確定見積りを書面でお送りし、法律で当事務所に義務づけられているとおり、貴社の実質的支配者を確認します。
- 2
本国での委任状と書類
本国の登記所が発行するどの書類が必要か、また親会社が本国でどの委任状に署名するかをご案内し、アポスティーユまたは領事認証と法定翻訳の手配・調整を行います。
- 3
設立または登記
子会社または支店の公正証書と、商業登記所での登記を準備します。公証人費用、登記費用、行政手数料(tasas)は別途、貴社のご負担となります。
- 4
NIF、投資登録簿、税務登録
NIFの手続きを行い、税務登録申告書(declaración censal、様式036)で事業活動の開始を届け出て、投資後1カ月以内に投資登録簿への届出が行われることを確認します。
- 5
貴社の人員
貴社が人員のために申請する居住許可、家族の帯同、社会保障制度への企業登録、各従業員の加入手続きを担当します。
- 6
手続きはすべて書面・遠隔で進めます。
当事務所が行わないことは?
- 登記上の本店所在地や送達先住所の提供は行いません。
- 当事務所が貴社のスペイン法人の取締役、秘書役または出資者になることはありません。名目上であっても同様です。
- アポスティーユの付与や法定翻訳への署名は行いません。その手配・調整を行います。
- 通関代理人(representante aduanero)、輸入ワンストップショップ(IOSS)の仲介者、製品安全に関する法令が求める貴社製品のEU域内の責任者にはなりません。
- 欧州経済領域に本店所在地も営業拠点もない企業のスペイン商標の出願は取り扱いません。一方、スペインを含む27の加盟国すべてで有効な欧州連合商標(EU商標)の出願は取り扱います。
- 支店の税務代理は、事前に担保を取り決めた場合に限りお引き受けします。法律上、代理人が納税について責任を負うためです。
貴社の国・地域によって何が変わりますか?
親会社の所在国によって、次の3点が変わります。スペインでの源泉徴収に上限を設ける租税条約があるか(条約がない場合、配当と利子は19%、使用料は24%)、書類がアポスティーユで足りるか、それともより時間のかかる領事認証が必要か、そして人員の短期商用渡航に査証(ビザ)が必要かです。
| 国・地域 | 二重課税防止のための租税条約 | 親会社の書類 | 短期商用渡航の査証 | ガイド |
|---|---|---|---|---|
| サウジアラビア | あり | アポスティーユ | 必要 | 本ページに記載 |
| アルゼンチン | あり | アポスティーユ | 不要 | アルゼンチンのガイド |
| オーストラリア | あり | アポスティーユ | 不要 | 本ページに記載 |
| バーレーン | なし | アポスティーユ | 必要 | 本ページに記載 |
| ブラジル | あり | アポスティーユ | 不要 | 本ページに記載 |
| カナダ | あり | アポスティーユ(2024年1月11日から) | 不要 | カナダのガイド |
| カタール | あり | 領事認証 | 必要 | 本ページに記載 |
| チリ | あり | アポスティーユ | 不要 | 本ページに記載 |
| 中国 | あり | アポスティーユ(2023年11月7日から) | 必要 | 中国のガイド |
| コロンビア | あり | アポスティーユ | 不要 | 本ページに記載 |
| 韓国 | あり | アポスティーユ | 不要 | 韓国のガイド |
| エジプト | あり | 領事認証 | 必要 | 本ページに記載 |
| アラブ首長国連邦 | あり | 領事認証 | 不要 | アラブ首長国連邦のガイド |
| アメリカ合衆国 | あり | アポスティーユ | 不要 | アメリカ合衆国のガイド |
| 香港(特別行政区) | あり | アポスティーユ | 不要(特別行政区の旅券の場合) | 本ページに記載 |
| インド | あり | アポスティーユ | 必要 | インドのガイド |
| インドネシア | あり | アポスティーユ | 必要 | 本ページに記載 |
| イスラエル | あり | アポスティーユ | 不要 | 本ページに記載 |
| 日本 | あり | アポスティーユ | 不要 | 日本のガイド |
| クウェート | あり | 領事認証 | 必要 | 本ページに記載 |
| モロッコ | あり | アポスティーユ | 必要 | 本ページに記載 |
| メキシコ | あり | アポスティーユ | 不要 | メキシコのガイド |
| ノルウェー | あり | アポスティーユ | 不要(移動の自由) | 本ページに記載 |
| オマーン | あり | アポスティーユ | 必要 | 本ページに記載 |
| ペルー | なし | アポスティーユ | 不要 | 本ページに記載 |
| 英国 | あり | アポスティーユ | 不要 | 英国のガイド |
| シンガポール | あり | アポスティーユ | 不要 | 本ページに記載 |
| スイス | あり | アポスティーユ | 不要(移動の自由) | 本ページに記載 |
| 台湾 | なし | 領事認証 | 不要(身分証番号の記載がある旅券の場合) | 本ページに記載 |
| トルコ | あり | アポスティーユ | 必要 | 本ページに記載 |
| ベトナム | あり | アポスティーユ(2026年9月11日から) | 必要 | 本ページに記載 |
2026年11月2日に、スペイン財務省(Ministerio de Hacienda)の租税条約一覧、ハーグ国際私法会議(HCCH)の締約状況表、EUの査証リストで確認しました。査証欄の「不要」は、任意の180日間につき最長90日までの滞在を指し、就労は認められません(義務7)。香港:特別行政区の旅券であれば査証が免除され、アポスティーユは香港自身の当局が付します。台湾:書類は公証人の認証を経て、台北のスペイン領事部(Sección Consular de España en Taipéi)が領事認証を行います。
ご依頼をお受けできない相手は?
EUの制裁措置により、当事務所は、ロシア政府、ロシアに設立された事業体、ベラルーシの公的部門(同国政府、政府機関、公営企業)またはそれに代わって行動する者の業務はお引き受けしません。
よくあるご質問
スペインで会社を設立するには、スペイン側の出資者が必要ですか?
いいえ。貴社がスペインの会社の唯一の出資者となることができます。また、サービス活動については、スペイン人またはスペイン居住者の出資者・取締役・従業員を求めることが、法律で禁じられています。ただし、現地での体制に関する義務は果たす必要があります。NIF、各種の届出・申告、そして場合により税務代理人または投資の事前許可です。
スペイン国外から会社を経営できますか?
はい。法律上、取締役が出資者であることも、スペインに居住していることも求められていません。会社または親会社を代表して公証人の前で署名するには、各人がスペインの税務上の番号を必要とします。NIE、またはNIEを持っていない場合はMで始まるNIFです。
どのくらいの期間がかかりますか?
主に、本国で親会社の書類のアポスティーユまたは領事認証にかかる期間と、投資に事前許可が必要な場合は行政機関の審査期間(最長3カ月)によって決まります。人員の許可は20日以内に、査証は原則として10営業日以内に決定されます。貴社の案件の期間は、事前検討の段階でお伝えします。
スペインへの投資に許可は必要ですか?
原則として不要です。外国投資は自由です。ただし、EU・EFTA域外の企業、または域外から支配されているか域外の者が25%超を保有している企業が、戦略分野の会社の10%以上または支配権を取得する場合は、許可が必要です。外国政府の支配下にある企業の場合も、許可が必要です。判断に迷う場合は、任意の事前照会(consulta previa)を利用でき、30営業日以内に回答されます。
税務代理人を任命する必要がありますか?
支店を置き、本社がEU域外の企業である場合は、原則として非居住者所得税の税務代理人が必要です。その代理人は納税について連帯責任を負います。EU域内に拠点がなく、スペインでIVAの納税義務者となる場合は、IVAの税務代理人も必要です。ただし、ノルウェーやIVAのワンストップショップのような例外があります。子会社はスペインの会社であるため、不要です。
貴事務所に、会社の登記上の本店所在地を引き受けていただけますか?
いいえ。当事務所は登記上の本店所在地や送達先住所の提供を行っていません。また、法律上、会社は、スペイン国内で実際に経営が行われている場所、または主たる事業所がある場所に本店所在地を置かなければなりません。所定の代理権の付与を受ければ、スペイン国税庁からの電子通知(notificaciones electrónicas)を、貴社に代わって受け取ることはできます。
対応言語は何ですか?
スペイン語と英語です。書面・遠隔で、時間帯を問わず、貴社の現地の時間帯にもご対応します。国の行政機関での手続きはスペイン語で行われるため、親会社の書類には原則として法定翻訳が必要です。その手配・調整は当事務所が行います。
投資によってスペインの居住許可を取得できますか?
いいえ。投資による居住許可は、2025年4月3日に廃止されました。方法は、貴社が人員のために企業内転勤の許可、高度専門職の許可またはEUブルーカードを申請することです。当事務所が貴社に代わって申請します。
本ガイドは一般的な枠組みを説明するものであり、個別の案件の検討に代わるものではありません。適用される内容は、取引の内容、業種および組織構成によって異なります。